RB-TN-001「冬季におけるオイカワの定着ポイントと高活性群の関係性」
冬季におけるオイカワの定着ポイントと高活性群の関係性
釣魚として一般的に知られるオイカワは、冬季には「寒バエ」などと呼称され、一部の釣り愛好家から好ターゲットとして愛されている。ライゼンバイトがオイカワ専用ルアーを開発した事で、冬季においてもルアーでオイカワを釣る事は難しくはなくなったが、研究を進めていくと冬季におけるオイカワは、定着するポイントによって著しく活性の度合いと、「ルアーによる釣りやすさ」に差が見られる事が判ってきた。
本稿では、その「冬季におけるオイカワの定着ポイント」と「ルアーで釣りやすい高活性群」の関係について、判明している事と考察を述べる。ただし、本稿で述べる事は仮説の域を出ないものも含まれており、未だ研究段階である事を予めご了承願いたい。
冬季におけるオイカワの定着ポイント
冬季におけるオイカワは、定着するポイントが温暖期とは異なる事で知られている。しかし、釣り界において冬季におけるオイカワの定着ポイントについて深く触れられている知見は少ない。むしろ一般アングラーの多くが、冬季のオイカワの定着ポイントを見つけられずにいるのが現状である。
特に大規模河川におけるオイカワの冬季定着ポイントは、オイカワの反応の鈍さも手伝って、見つけ出すのは極めて困難である。その一方で、小規模・中規模河川であれば、オイカワの冬季定着ポイントは容易に見つけられる事がフィールドワークによって判ってきた。
小規模・中規模河川における冬季のオイカワ定着ポイントは、大きく分けて以下の二つである。
ポイントA:流速が速い平瀬
流速の速い平瀬は温暖期におけるオイカワの定番ポイントであるが、冬季においてもごく少数ながらオイカワの群れが残っている場合がある。
しかし、こうした冬季にも平瀬に残っているオイカワは活性が低い事が多く、ルアーに対する反応も著しく悪い事が多い。ラージマウスバスなどを対象とした釣りでは、一般的には冬季のような悪条件下で一級ポイントに残る個体は高活性である事が多いと言われるが、オイカワでは真逆の傾向であるのは興味深い。
ポイントB:平瀬・早瀬に隣接した適度な流速と深さのある淵
平瀬・早瀬の下流側に隣接した適度な流速と深さのある淵は、小規模・中規模河川において冬季にオイカワが定着している可能性が最も高いポイントである。
集まっているオイカワの個体数は淵の規模に比例している傾向があり、大きく開けた淵の方が定着するオイカワの個体数も多い傾向にある。ただし、瀬に隣接した淵であればどこでも良いというわけではなく、その条件については後述する。
冬季にルアーで釣りやすいポイントの条件
前述した通り、冬季におけるオイカワの定着ポイントは、大きく分けるとポイントAとポイントBの二つである。しかしポイントAにいるオイカワは数も少なければ、活性も低い事が多いため、少なくともルアーを使った釣りには不向きである。
また、ポイントBに関しても、平瀬・早瀬に隣接した淵であればどこでも良いわけではなく、特定の条件が重なる淵に定着している群れに限って高活性である傾向にある。以下がその条件である。
- 日当たりが良い
- 川幅が比較的開けている
- 速過ぎない適度な流速がある
- 水深が50㎝~1m前後
- 水底に珪藻が広範囲に生えている
- 平瀬や早瀬の下流側に隣接している
この条件に当てはまる淵は、集まっているオイカワの数が多い傾向にあり、高活性でルアーへの反応が良い事も多い。つまりこの条件が揃ったポイントこそが冬のオイカワ釣りにおけるスイートスポットであり、このスイートスポットを見つけることが冬のオイカワをルアーで釣る上でのほぼ必須事項という事になる。
また、この条件が重なる淵がスイートスポットになる事は、奈良県の高田川、曽我川、飛鳥川など複数の河川で確認できており、他県の河川でも再現性が得られる可能性は高い。
なぜスイートスポットのオイカワは活性が高いのか
ではなぜスイートスポットにいるオイカワの群れは高活性傾向にあるのか。既存の知見と照合する事でほぼ解答が得られるかたちとなっている。条件別に考察する。
条件①日当たりが良いこと
例外を除けば基本的に魚類は変温動物であるため、冬季における生息環境に対する日当たりの良さは日々の活動を支える極めて重要な条件である。オイカワも冷水環境に特化した種ではなく、特に厳寒期においては、冷風が吹きつけた瞬間に水底へと移動して動きが弱まるといった挙動を見せることから、寒さによる影響を受けやすい種であると推測できる。
つまり冬季において日当たりの良い環境というものは、寒さによる影響を受けやすいであろうオイカワにとって、より安全で、なおかつ活動力を維持できる良い環境であると推測できる。
また、日当たりの良さは、オイカワの餌でもある珪藻の発育にも関わる重要な要素であり、餌の供給という観点からみても重要な要素であると考えられる。
条件②川幅が比較的開けている
川幅が比較的開けているという事は、淵自体の面積が広く、より多くのオイカワが定着できる事を意味する。特にルアーを使ったオイカワ釣りにおいては、群れの大きさは非常に重要である。
群れが大きいほど個体間における競争が促されるため、結果としてルアーに対する反応がより最大化されやすいからである。また、群れが大きければ大きいほど、個体としての多様性が構造的に発生しやすくなるため、結果として群れが大きいほどルアーに反応しやすい個体も多くなりやすいと考えられる。
さらに、淵の川幅が比較的開けているという事は、河川の構造的にも水流が弱まる場所であると言え、遊泳力の弱まった冬季のオイカワにとっては過ごしやすい環境であると考えられる。
条件③速過ぎない適度な流速がある
オイカワは本来、流速が速い平瀬や早瀬を好む種である事は、魚類学の知識や釣りの知識として広く知られている事である。また、フナやコイなどに比べてオイカワは低酸素状態に弱い事を示唆する研究結果がある(山元憲一 1991)。さらに、オイカワは自身の巡航速度(一般的に2~3BL/sと推定。BLはBody lengthの意)を超える流速環境は避けるという報告もある(小野田ほか 2012)。
つまり、冬季におけるオイカワは、溶存酸素が多い本来好む流速環境に近似した環境でありながら、なおかつ冬季における運動能力が低下した自身の巡航速度を超えない流速環境として、「速過ぎない適度な流速が保たれた環境」を好んで選んでいる可能性が高いと考えられる。
条件④水深が50㎝~1m前後
50㎝~1m前後という水深は、温暖期にオイカワが好む環境と比べると少し深い。しかし、前述したように冬季のオイカワは冷風などを避ける傾向にあり、水深50㎝未満では寒さの影響を極端に受けやすくなってしまうので、オイカワにとって好ましい環境ではないと思われる。
さらに冬季のオイカワは水底付近に集まる事が多いが、あまりに深い淵では、構造に対する流体力学的作用から水底付近の流速が弱まり過ぎるなど弊害が生じやすくなる。
また、深すぎると冬季の弱まった太陽光ではその恩恵も受けづらくなる。結果として水深50㎝~1mという水深が、冬季のオイカワにとって最適な深さになっているのではないかと考えられる。
条件⑤水底に珪藻が広範囲に生えている
水底に珪藻が広範囲に生えている環境という事は、冬季の運動能力が低下したオイカワにとって、苦労せずに食べられる餌に溢れた環境という事になる。動物性の餌が乏しくなる冬季においては、珪藻のような食べ物はオイカワにとって極めて重要な餌資源である事は容易に推察できる。よって珪藻が多く生えた環境を選ぶのは生物として合理的な判断であると思われる。
また、珪藻が広範囲に生えるという事は、水底まで太陽光が十分に届いている環境である事を意味している。前述した通り、冬季のオイカワにとって、日当たりの良さは日々の活動を支える極めて重要な要素であると考えられるため、珪藻の豊富な環境は日当たりという観点から見ても冬季のオイカワにとって重要であると考えられる。
条件⑥平瀬や早瀬の下流側に隣接している
平瀬や早瀬の下流側に隣接した淵という事は、平瀬や早瀬で豊富に取り込まれた酸素が直接的に供給される淵であるという事になる。低酸素耐性が比較的弱いであろうオイカワにとっては重要な条件であろう。
また、平瀬や早瀬の下流側に隣接しているという事は、条件③の「速過ぎない適度な流速」が保たれやすい環境であると言える。
さらに、オイカワは動物性ならびに植物性の流下物も餌として利用しており、平瀬や早瀬から発生した流下物にもありつける優良な環境という事になる。
以上の事から、平瀬や早瀬の下流側に隣接している淵である事が重要であると考えられる。
冬季におけるスイートスポットは極めて理にかなった場所
結論を言うと、ライゼンバイトがフィールドワークで発見した冬季オイカワ釣りにおけるスイートスポットは、日射量・流速・餌の供給量・瀬淵の連続構造などから考えて、既存の調査・研究結果とも整合性が非常に高い、合理的かつ最適なオイカワの越冬ポイントの一つであると考えられる。
結果的にオイカワの活性も比較的高く維持されており、なおかつオイカワの個体数も多いため、ルアーで狙うには最適のポイントになっているのであろう。
冬季オイカワ釣りにおけるスイートスポットの条件をここまで詳細にまとめた文献は、ネット上の調べられる範囲では存在していなかった。つまり知見としては新規性が高い可能性があり、今後多くの人に利用されれば幸いである。
参考文献
小野田幸生・萱場祐一 (2012):水際部の低流速域に対して配慮が必要とされる流速条件とは?―魚類による低流速域の利用に関する水路実験から―, 土木技術資料54(5), 6–9.
山元憲一 (1991):コイ科魚類6種の低酸素下における逃避反応, 水産増殖, 39(2), 129–132.
水野信彦・萱場祐一 (2000年頃) :魚の棲む川へ『瀬と淵』、そして『水辺の植物』, 土木研究所 自然共生研究センター, ARRC NEWS.
国土交通省近畿地方整備局大和川河川事務所(年代不明):大和川の生き物, 国土交通省近畿地方整備局大和川河川事務所ホームページ, <https://www.kkr.mlit.go.jp/yamato/river/ikimono/index.html>(2026年1月13日閲覧)
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