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RB-TN-002「ナマズにおける狩り場と休息場所の使い分けとルアーに対する反応変化」

RISENBITE PUBLIC DOCUMENTS

資料種別:テクニカルノート

発行元
釣りを科学するルアーブランド「ライゼンバイト」
資料番号
RB-TN-002
資料公開日
2026年6月5日
著者
加藤展幸
帰属表示と利用上の原則
本資料の著作権はライゼンバイトに帰属します。内容の全部または一部について、無断で転載、複製、改変、翻訳、配布、商業利用する行為、および本資料に記載された研究成果を個人的な学習・応用以外の目的で無断利用する行為を禁止します。

ナマズにおける狩り場と休息場所の使い分けとルアーに対する反応変化

日本でナマズ釣りのメインターゲットとなっているマナマズ(以下、ナマズと呼称)の行動について、「昼は隠れ家にいて、夜になると隠れ家から出てきて捕食活動を行う」という点については広く知られている。

しかし、ライゼンバイトによる近年の研究では、地域によってはナマズが地理的距離を隔てた狩り場と休息場所を明確に使い分けている可能性が高い事が判ってきている。

さらには、そういった『距離を隔てた狩り場と休息場所を使い分けている可能性が高い個体群』の場合、狩り場と休息場所では、ルアーに対する反応が著しく異なる可能性が高い事も判ってきた。

そして、実はこの「ナマズの狩り場と休息場所」についての知識を持たないが故に、「ナマズが釣れない」と苦労している釣り人が多いように思う。

私の知る限りでは、ナマズの研究において、狩り場と休息場所におけるルアーに対する反応変化にまで踏み込んだ文献を目にした事がないため、ここに記述する。

ただし、本稿における観察結果は、実地における目視による観察が主であり、テレメトリなどを利用した同一個体等を高精度に追跡した上での結果ではない。その上、未だ研究段階に過ぎない情報が多分に含まれることは予めご留意願いたい。

観察地点と条件

本稿の根拠となる現象が観察出来たのは、奈良盆地にある高田川4地点、甘田川1地点、土庫川2地点である。

奈良中部には他にも曽我川、飛鳥川、寺川などの河川があるが、観察地点にそれら河川が含まれていない理由は、吉野川分水による農業用水取水のため、それら河川ではナマズが活発になる初夏から秋頃まで河川が増水している箇所が多く、観察が困難なためである。

以下に実際に観察された傾向を示すが、釣り場環境保存の観点からすべての地点を公に晒すことはできない。よって、一部を代表例として示す。また、同様の理由から地図画像には一部モザイク処理を行い、場所を特定しづらくしている事をあらかじめご了承願いたい。

本来、特定の現象を観察・記録するためには条件を明確すべきだが、同現象を観察できたのは、ルアー製品のフィールドテストやロケの最中であったため、厳密に条件を設定して観察したわけではない。

ただし、ここで述べる現象に関しては、「ナマズの休息場所と推測される場所では一貫してルアーに対する反応が悪い」という点が主軸となるため、季節や時間帯、気象条件、使用ルアー等といった、魚の状態や反応を左右しうる因子が異なる状況下で再現が得られた方が、むしろ好都合であるように思う。

例①高田川 観察地点A

図1 奈良県高田川の観察地点Aの地図画像(出典:Googleマップ 2026年6月取得)

先ずは図1をご覧いただきたい。同画像はGoogleマップから取得した、高田川の観察地点Aの地図画像である。

青の太線が河川を示しており、川は画像の下方から上方に向かって流れている。赤い円で囲まれた範囲が、ナマズのルアーに対する反応が良好な傾向にある区間。緑の円で囲まれた範囲が、ナマズのルアーに対する反応が不良な傾向にある区間。黄色の丸点は堰の場所を示している。

赤円下方末端から緑円上方末端までの距離は、直線でおよそ100メートル。

生態学的観点から見た場合

この観察地点Aでは、緑の円で囲まれている区間には、水底近くに護岸が深くえぐれている箇所があり、ナマズたちの恰好の休息場所となっている。日暮れ後に観察すると、緑円の区間から赤円の区間に向かって川を遡上しているナマズが見られる事がある。

この地点のナマズたちは、黄色点が示す堰を日常的に乗り越えている様子はない。また、回遊や待ち伏せ等をしている様子から、堰直下や堰までの道のりを狩り場として利用しているようである。

また、当然ながら緑円の区間より下流にも河川は続いているが、下流側と観察地点Aの区間の間は水深がごく浅い急流部になっており、下流側と観察地点Aを日常的に往復しているナマズを一度も見た事がない。

従って、同観察地点で見られるナマズの多くは、緑円の区間内の物陰を休息場所として利用し、夜間になると赤円の区間内を狩り場として利用している可能性が高いと推測できる。

ルアーに対する反応的観点から見た場合

興味深いのは、ナマズの休息場所と思われる緑円の区間内ではルアーへの反応が悪い傾向があり、ナマズの狩り場と思われる赤円の区間内では、ルアーへの反応が良い傾向にある点だ。

緑円の区間内に留まっている個体は、夜間でもルアーに反応しないものも多く、身動きしない個体や、ルアーを近づけると逃げてしまうケースも少なくない。

一方、赤円の区間内にいる個体は、ルアーを攻撃・捕食しようとするものが増える。さらには、ただ反応するだけに留まらず、同じルアーに二度、三度と繰り返し食いついてくる事も少なくない。

実際、私がこの観察地点Aでナマズを釣り上げた事があるのは、ほとんどが赤円の区間内で、赤円の区間内で10個体前後、緑円の区間内では1個体くらいの割合である。

なお、釣り上げた総個体数自体が少ない理由は、この観察地点Aでナマズの存在を確認できたのは初夏頃のみという限られた期間だけである事と、同期間中にこの地点にストックされる個体数が少ない事が要因である。

例②土庫川 観察地点B


図2 奈良県土庫川の観察地点Bの地図画像(出典:Googleマップ 2026年6月取得)

次は図2、土庫川の観察地点B。例①と同じく、青の太線が川、緑円は反応が不良な区間、赤円は反応が良好な区間、黄色点は堰である。

川は画像の下方から上方へと流れている。赤円下方末端から緑円上方末端までの距離は約460メートル。

生態学的観点から見た場合

観察地点Bでは、ナマズが狩り場として利用している事が観察できた範囲が狭く、堰直下周辺に集中している傾向が見受けられた。実際は、休息場所と思われる緑円の区間から堰までの道のりでも索餌しているのだろうが、何度訪れても個体数が集中し、かつ狩り場としている事が観察できたのは堰直下周辺だけだった。

赤円から緑円の間には、ナマズにとって休息場所に適している環境が少なく、緑円の区間内まで下ってはじめて物陰が多数あるという環境である。結果的に460メートルもの距離を行き来しているのではないかと思われる。

なお、黄色点の堰は、増水でもしないとナマズが超えられるような高さではない。また、緑円の区間より下流はナマズの魚影が極端に薄くなる事から、この観察地点Bに一帯のナマズが集中し、緑円の休息場所と赤円の狩り場を利用しているものと思われる。

ルアーに対する反応的観点から見た場合

興味深いのは、やはり観察地点Bでもナマズが狩り場としている場所ではナマズのルアーに対する反応が良い傾向にあり、休息場所と思われる場所では反応が悪い傾向にある点である。

同地点では、赤円区間(=狩り場)のナマズはとにかくルアーへの反応が良い。同時に狩り場まで遡上してくる個体数が平均して2~3匹ほどと少ないが、ルアーに好反応を示さなかった事はほとんどない。

一方で、休息場所と思われる緑円区間のナマズは非常に反応が悪い。多い時で5~6個体ぐらい見かけるが、ルアーを近づけただけで逃げてしまう個体がとても多く、過去に緑円の区間で釣れたナマズはわずか1匹である。

日によって当たりはずれの大きい釣り場であるため、過去に赤円の区間で釣りあげられた本数も5本程度と少ない。しかし、赤円の区間と緑円の区間における、ナマズのルアーに対する反応の違いは、視覚的にも体感的にも確かに感じられた。

例③甘田川 観察地点C


図3 奈良県甘田川の観察地点Cの地図画像(出典:Googleマップ 2026年6月取得)

次は図3、甘田川の観察地点C。青線・赤円・緑円が示すものや、流れの方向は同じだが、例③では黄色点が示すのは河川の合流地点である。赤円下方末端から緑円上方末端までの距離は約330メートル。

生態学的観点から見た場合

観察地点Cの特徴は、赤円の区間が広い事である。前出の二地点は河川の壁面がただのコンクリート面だったのに対し、同地点は河川の両壁面に植生が比較的多く見られる事から、ナマズの狩り場自体が広範囲に及んでいるものと思われる。

しかし、特にナマズが活動的になる日没後3時間以内は、ナマズの魚影・反応ともに黄色点(=河川合流地点)に向かうほど濃くなる傾向にある。黄色点より上流の二河川は、共に水深が極端に浅くなる事も少なくなく、遡上してきたナマズは最終的に河川合流地点周辺を狩り場として定着している事が多い。

休息場所と思われる緑円の区間は、他所と比べて少し深くなっており、ナマズは深場の壁面に身を寄せるようにして休息している事が多い。

同地点は植生が比較的豊富であるものの、ナマズが休息場所に出来るほど物陰が多いわけではないため、緑円区間の深場を休息場所に選んでいるものと推測される。なお、緑円上方末端には水門らしきものが設けられており、日常的にナマズが往復できるような構造にはなっていない。

ルアーに対する反応的観点から見た場合

同地点は前出の二地点よりも緑円区間と赤円区間における実績の差が顕著である。過去に赤円の区間で釣り上げる事が出来たナマズの個体数は15~20匹ほど。一方、緑円の区間で釣り上げられたナマズの個体数は0匹。

ここでも緑円の区間にいるナマズが視認できないわけではない。日によっては5匹前後ほど確認出来る事もある。しかし、見えていてもルアーに反応しないか、ルアーを近づけると逃げてしまうのである。

同地点の赤円の区間にいるナマズは、ルアーに対して好反応である事が多い。しかも奈良中部の中では、同地点はナマズの魚影自体濃いため、赤円の区間にナマズがいれば、いる分だけ入れ食いで釣れる事も少なくない。

他所でも休息場所では反応が悪い

ここまで条件の異なる三地点を見てきたが、共通点は明確である。ナマズが狩り場にしている場所ではルアーに対する反応が良い。一方、ナマズが休息場所にしていると思われる場所では、あからさまに反応が劣る。

しかし実は、この傾向は例に出した三地点だけで見られるものではない。例には出していない他所でも全地点で同じ傾向が見られるのである。

もっと興味深いのが、Youtubeなどで一般の釣り人によるナマズ釣りを観察していると、全く違う地方であるにもかかわらず、「ここのナマズは釣るのが難しい」と言っているポイントと、ヒットが連発するポイントが隣接しているケースがあること。

もちろん、実地での確認を行わないと何も確定はしない。しかし、上記のような例は、奈良県のみならず、他の地方でも本稿で説明しているものと同様の現象が起こっている可能性がある事を示唆している。

恐らくナマズには摂食モードのオンとオフがある

さらに、過去に同様の現象が観察できた全地点のナマズの反応には、共通の挙動が見られることが判っている。それは休息場所と推測される場所における、ルアーに対するナマズの反応や、その質である。

例では赤円で示した「ナマズの狩り場」となっている場所におけるルアーに対する反応は、日によって差がある。日によって魚の活性は異なるので、これは当たり前の事である。

一方、休息場所でのナマズの反応には、基本的に大きな差は見られない。音にも敏感に負の反応を示し、近づくルアーを避ける事が頻発する。多くの釣り人はこれを見て、「活性が低い」「ルアーにスレている」と判断するであろうが、活性が低いというより、明らかに摂食モードそのものが切れているような反応なのである。

実はこれに極めて似た反応を示す魚がいる。それが鯉である。私は鯉専用ルアーの開発者であるため、何百という数の鯉を釣ってきて、数え切れないほどの鯉を観察してきた。

鯉は一日を通して、摂食モードのオンとオフを繰り返していると思われる挙動を見せる。私が開発した鯉専用ルアーは、餌やフライより釣れると言われるほどによく釣れるが、摂食モードが切れていると見受けられた鯉が釣れた事は一度もない。

そして、休息場所と推測される場所でナマズが見せる、ルアーに対する反応や質そのものが、摂食モードが切れていると思われる鯉の挙動と非常に似ているのである。

つまり、恐らくはナマズにも摂食モードのオンとオフがあり、休息場所にいるナマズの多くは摂食モードがオフになっているからこそ、反応が悪いのではなかろうか。

反論

①釣り人による人為的プレッシャーの影響について

ナマズが人気の釣りターゲットである以上、人為的プレッシャーの影響は考えなければいけない。

しかしながら、本現象が観察された全地点で、ナマズの休息場所と思われる区間と偶然重なり合うように、局所的に人為的プレッシャーがかかるという事は考えにくい。従って、人為的プレッシャーが主因という可能性は低くなると思われる。

②観察地点Bにおける狩り場規模の不自然さについて

観察地点Bにおいて、赤円で示された狩り場規模が小さい事には、私自身も不自然さを感じる。観察地点Bの説明でも触れた通り、恐らく観察地点Bの狩り場規模は、例で示された規模より大きいはずである。

それを確かめるためには、狩り場規模特定のための条件を設定し、さらに観察を重ねる必要があるだろう。

③複合的要因による結果を単一の要因で評価している可能性について

こういった自然現象を分析する上で恐ろしいのは、認知バイアスである。例えば、本現象が何らかの別要因と全くの別要因が重なった結果であるにもかかわらず、単一の要因で評価してしまっている可能性である。

しかしながら、その点に関しては、この度の観察が事前に条件を絞らずに行われた事が幸いしている部分もある。要因が複雑であるほど、観察されたタイミングがランダムな状況では、要因自体が重なる確率と可能性が下がる事もあるからだ。

また、例え複合的な要因を誤評価していたとしても、ランダムな条件下かつ異なる河川、しかも7地点で同様の傾向が見られたというのは、仮説として考慮する価値はあると思われる。

それでもやはり、認知バイアスによる誤評価の可能性はゼロではない。だからこそ、さらなる観察によるデータの補完は必要不可欠である。

④奈良中部の特定河川以外で同現象が再現されなかった場合

本稿で述べた現象が奈良中部の特定河川以外で再現されない可能性は残っている。同現象が特定地方の特定河川でしか再現されなかった場合、原因として先ず考えられるのは、特定地域における固有の特性である。

特定の種が特定の地域でのみ独自の性質を見せるというのは、生物全体では珍しいことではない。本稿で述べる現象が、奈良中部の特定河川のナマズだけが持つ固有の性質が原因である可能性もゼロではないという事だ。

であるからこそ、他地方においての観察も視野に入れながら、データを取り続ける必要がある。

ルアーでナマズを釣るにはナマズの狩り場を見つける事が大事

冒頭でも述べた通り、これらは所詮仮説である。しかも科学的に言えばかなり粗い段階の仮説と言える。

ただし、そんな程度の仮説を基にしても明確に言い切れる事は、ルアーでナマズを釣るには、ナマズの狩り場を見つけて狙った方が、釣れる可能性が高いという事だ。

もちろん、休息場所と思われる場所にいるナマズが全く反応しないわけではない。多くの生物は基本的に同種においても個体にも多様性があるため、休息場所にいながらルアーに反応する個体がいても不思議ではない。

しかし、何匹狙っても、日を変えても、明らかに反応が悪い一帯があれば、そこはナマズの休息場所かもしれない。そこは無理に狙い続けず、休息場所の近くには必ずといって良いほど狩り場があるので、狩り場を探す事に専念するのが良いだろう。

今後の課題

前述した通り、本稿で書かれた事は稚拙な仮説である。今後、本仮説をさらに裏付けるには、他水系における、より多くの観察とデータ収集が必要である。

さらに仮説を確実に裏付けるためには、テレメトリなどを利用した複数・同一個体の高精度追跡を行い、複数の同一個体が狩り場においてのみ、繰り返しルアーに反応する事を証明せねばならないだろう。

私個人の理想的には、ナマズの挙動パターンを分析し、摂食モードがオンになっているナマズと、オフになっているナマズを、その挙動だけで区別できる手段を理論的に構築できればと思う。

参考文献

Googleマップ(2026年6月取得)

更新履歴

2026年6月8日   項目『反論』の追加

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