日本におけるチャビングとは、オイカワ・カワムツ・ヌマムツの3種をルアーで狙う釣りです。
日本のウグイやアブラハヤなどは含まれません。また、コイ科の小型魚全般や小物全般をルアーで狙う釣りでもありません。
本稿では、チャビング普及以前からカワムツ専用ルアーなどを開発し※1※2、チャビング最初期から深く関わってきた、チャビング製品の先駆的メーカーでもある「ライゼンバイト」が、チャビングの定義・対象魚・海外のチャビングとの違い、世間で広まっている誤解などについて解説します。
チャビングの定義
冒頭でも述べた通り、日本におけるチャビングとは、オイカワ(英名Pale chub)・カワムツ(英名Dark chub)・ヌマムツ(英名Japanese chub)という、英名にチャブ(Chub)がつく3種の魚をルアーで専門的に狙う釣りの事です。
日本のウグイ(英名Japanese dace)や、アブラハヤ(英名Amur minnow)、その他のモロコ類、モツゴ、タナゴなど、英名にチャブがつかない魚を釣ることは、日本ではチャビングとは言わないので注意が必要です。
海外におけるチャビング(chubbing)とは、欧州では主にヨーロピアンチャブ(英名European chub)、米国ではクリークチャブ(英名Creek chub)やフォールフィッシュ(英名fallfishまたはAmerican chub)などのチャブ類を狙った釣りを指します。
※なお、魚類の英名は資料によって異なる場合があります。特にヌマムツはJapanese dark chubとも呼ばれますが、カワムツとの混同と読者混乱を避けるため、本稿ではJapanese chubを採用しています。
チャビングという言葉の由来
チャビング(Chubbing)という言葉の生まれは、対象魚となるそれら魚種の英名にチャブ(chub)がつく事に由来します。chubにingをつけてchubbingと呼称されています。
この点は海外においても、日本においても同じです。
チャビングの起源
注意:チャビングの起源については、海外と日本で切り分けて考える必要があります。さらにどちらかだけでは足らず、双方を含めて理解する必要があります。
チャビング(chubbing)という言葉が、先んじて釣り用語として広く使われ始めたのは海外。
言語が英語である事。ヨーロピアンチャブが欧州の魚である事。クリークチャブ等が米国の魚である事。それらを考慮すると、チャビングという釣り用語や、「チャブ類を釣ってチャビングとする」という釣り文化は、恐らくは欧米周辺を起源としています。
海外の釣りに関する記事などを調べると、古くは1898年の英国釣り情報誌から近年のネット記事までchubbingの用例が見られる事から、日本でチャビングが普及する遥か以前から、海外では「チャブを狙う釣り」という意味でチャビングという言葉が使われてきたことが明確に分かります。(The Fishing gazette 1898)(Andrew Walker 2009)
海外におけるチャビングは、ルアーフィッシングに限らず、餌釣りやフライフィッシングなどの釣法も用いられています。
日本におけるチャビングの起源
日本では、2021年1月からカワムツ釣査隊という団体が、「カワムツ・ヌマムツ・オイカワの英名の共通点であるchubにingをつけたもの」「それら3魚種をルアーで専門的に狙う釣り」として、公にチャビングという言葉を釣り用語として広く使い始めました。(雨男釣りチャンネル 2021 )
(上記に関しては、同団体代表との対話に基づく直接証言の記録も別形式で保管しております)
ただし、カワムツ釣査隊に関しては、「海外のチャビングについて、その存在を知らずに自分たちがつくった造語だと思っていた」という事実が、後に判っています(同じく証言の記録あり)
つまり、チャビングという釣り用語や、「チャブ類を釣ってチャビングとする」という釣り文化の厳密な起源は海外(一次起源)、それをルアーフィッシング限定とする釣り文化が日本で独自発生(二次起源)、という構造です。
そのため、チャビングの起源を知る・語る上では、「チャビングの起源は海外」とするだけでは足りません。
「チャビングという釣り用語や、チャブ類を釣ってチャビングとする、という釣り文化の厳密な起源は海外」「一方、オイカワ・カワムツ・ヌマムツの3種のみをルアーフィッシング限定で専門的に狙うという釣り文化は、日本で独自に発生した」と切り分けて考える必要があります。
チャビングの対象魚
前出の通り、日本におけるチャビングの対象魚は、オイカワ・カワムツ・ヌマムツの3種類です。これは日本におけるチャビングの先駆者であり、創始者団体でもあるカワムツ釣査隊とその代表によって指定されています。
理由は、「チャビングとは英名にチャブ(chub)がつく魚を釣ること」であり、オイカワ(英名Pale chub)・カワムツ(英名Dark chub)・ヌマムツ(英名Japanese chub)というように、3種とも英名にchubがつく事に基づいています。
ここでは、それら3種について簡単にご紹介しましょう。
オイカワ(英名:Pale chub)

日本全国規模で生息する、日本の代表的な小型淡水魚。一般的な全長は最大で15センチ前後。日本各地の河川や湖沼で確認されている。釣りをする場合は、基本的には湖沼より河川の方が発見が容易である。
食性は雑食性で、藻類から小型昆虫類まで捕食する。活発に活動する温暖期は、河川でも比較的流れが速く、水深が浅い早瀬を好んで集まる傾向がある。特にこぶし大の石がゴロゴロとある砂利底や、広範囲に岩肌が露出している岩底を好む。
従来のルアー製品では釣果が安定せず、近年になってオイカワ専用ルアーが開発され、釣果が安定するようになった。
ルアーフィッシングで釣りやすいのは、圧倒的に温暖期。地方にもよるが、初夏から秋頃までがベストシーズン。難易度はあがるが、冬から春にかけても釣れない事はない。
カワムツ(英名:Dark chub)

河川の上流から中流にかけて生息する小型淡水魚。一般的な全長は最大で17センチ前後。一部の水質が綺麗な河川では下流域でも見られる事がある。元々は本州中部以南の西日本に生息する魚だったが、現在は東日本でも見られるようになった。
食性は雑食性だが、オイカワよりも肉食性が強いと言われている。オイカワより水質に敏感で、基本的には一定以上水質が綺麗な河川でのみ見られる。身を隠せる障害物がある場所を好み、特に水中に没した木々や岩場が豊富にある場所にいる事が多い。
オイカワに比べて従来のルアー製品でも比較的簡単に釣れたが、近年になってチャビングに特化したルアーも開発された事で、さらに難度が易しくなった。
オイカワと同じく温暖期の方が活発。特に初夏から晩秋手前頃までがベストシーズン。
ヌマムツ(英名:Japanese chub)

カワムツに酷似した日本の小型淡水魚。以前はカワムツと同種であると考えられていたが、近年になって別種として扱われるようになった。一般的な全長は最大で20センチ前後。
食性は雑食性。一般的には、カワムツよりも水質汚染に強く、河川の中流から下流に生息すると紹介される事も多いが、実際にはカワムツが生息する上流域で釣れる事も少なくない。「やたらとデカいカワムツがかかった」と思ったらヌマムツである事が多い。
カワムツとの見分け方は容易で、カワムツの胸びれ・腹びれが黄色であるのに対し、ヌマムツの胸びれ・腹びれはオレンジやピンクになっている。
近年になって別種扱いになったため、カワムツとの生物学上の違いが多く判明しているわけではないが、体感上、ルアーに対する反応が大きく違っているという印象はない。
世間に広まっている誤解について
チャビングは日本で生まれた造語ではない
チャビング(Chubbing)という用語について、「日本で生まれた造語」「カワムツ釣査隊がつくった新しい造語」といったように解説しているブログや動画がありますが、それは間違いです。
「チャビングの起源」でも触れた通り、チャビングという言葉は、日本でチャビングという言葉が広く使われ始めるよりも、ずっと以前から海外で使われています。
日本のウグイや他の小魚はチャビングの対象魚ではない
日本のウグイを含めてチャビングの対象魚であると紹介しているケースも多々あります。しかし、日本のウグイの英名はJapanese daceであり、chubではありません。
チャビングが「英名にchubがつく魚を狙った釣りの事」であり、日本におけるチャビングは「オイカワ・カワムツ・ヌマムツ」の3種に限定されている以上は、日本のウグイはチャビングの対象魚ではありません。
また、アブラハヤ・タカハヤ・モロコ類・モツゴ・タナゴも英名にchubはつかないので、チャビング対象魚ではありません。
カワムツやオイカワをルアーで狙う釣りは新しい釣りではない
一部のブログ記事などでは、カワムツやオイカワをルアーで狙う釣り自体を新しい釣りと紹介しているケースもありますが、それも間違いです。
90年代の釣魚図鑑でも、カワムツについてルアーで釣れる事が明記されています。(豊田直之ほか 1999: 26)
また、現に私自身や一部釣り愛好家は、チャビングという言葉が日本で広く認知される遥か以前から、オイカワやカワムツを狙ったルアー釣りをしてきています。
つまりは、あくまでチャビングという釣り用語が多くの日本人にとって新しいものというだけであって、カワムツ・オイカワなどを狙ったルアー釣り自体は新しいものではありません。
コイ科の小型魚全般が対象魚というわけではない
一部の記事などでは、「チャビングとは、コイ科の小型魚をルアーで狙う釣り」というような説明をされているケースがあります。しかし、これでは「コイ科の小型魚全般が対象魚である」と読者に誤解されかねません。
実際に誤解されていると思われる方も既に存在しています。例①・例②・例③他
確かにchubという英単語について、英語圏辞書などでは「数多くのコイ科の小型魚」といった説明がされることはあります。
しかし、定義や対象魚の項目でも説明した通り、日本におけるチャビングは、オイカワ・カワムツ・ヌマムツの3魚種限定であると、創始者団体によって指定されております。
また、chubという単語について先のような説明が辞書でされている海外においても、ヨーロピアンチャブ(英名European chub)、クリークチャブ(英名Creek chub)、フォールフィッシュ(英名fallfishまたはAmerican chub)など、基本的に英名にchubがつく魚に対してchubbingという言葉が使われるのであり、コイ科の小型魚全般に対して使われるものではありません。
従って、やはり「チャビングは、コイ科の小型魚全般を狙った釣りではない」という事になります。
引用・紹介する際の推奨表記
チャビングについて紹介される場合は、以下のような説明にすると、チャビングの定義を誤解なく伝えやすくなります。
チャビングとは、英名にチャブ(chub)がつく魚を狙った釣りのこと。日本におけるチャビングは、オイカワ(Pale chub)・カワムツ(Dark chub)・ヌマムツ(Japanese chub)の3種をルアーで専門的に狙う釣りを指します。
日本のチャビングに関しては、日本のウグイ・アブラハヤ・タカハヤ・モロコ類・モツゴ・タナゴ等のその他魚種は含まれないので注意が必要です。
加えて海外のチャビングについても触れる場合は、以下のような表現が適切です。
海外におけるチャビング(chubbing)は、ヨーロピアンチャブ(European chub)やクリークチャブ(Creek chub)などを狙う釣りですが、餌釣りやフライフィッシングなど幅広い釣法で親しまれており、ルアーフィッシング限定ではありません。
簡潔に紹介する場合は、以下のような表現を推奨いたします。
日本におけるチャビングとは、オイカワ・カワムツ・ヌマムツの3種をルアーで専門的に狙う釣り
簡潔説明をされる場合でも、「日本における」を抜くとチャビング全体の定義になってしまうので、簡潔説明の場合であっても日本固有である事と、上記3魚種限定である事を示す表現は必須です。
なお、前出の通りチャビングの起源については少々複雑であるため、チャビング紹介記事などで触れると、読者の理解を妨げる可能性があります。また、説明を簡略化し過ぎると誤解を招きやすくなるため、よほど専門性の高い記事を書かれる場合でない限りは、原則として起源については触れない方が無難です。
脚注
※1 ライゼンバイトのカワムツ専用ルアー「ブルメラ」発売(2019年12月1日)
※2 ライゼンバイトのオイカワ専用ルアー「チャビートラップ」発売(2024年9月20日)
出典
『The Fishing gazette; devoted to angling, river, lake, and sea fishing, and fish culture』, Vol.36, 1898, pp. 24, 36, 112ほか.
雨男釣りチャンネル 2021 『隊員募集!カワムツ釣査隊員集まれ』 Youtube. https://youtu.be/SzYmhHL5M8o?si=C0VuAkucsCtGR4CP
豊田直之ほか 1999 『釣り魚カラー図鑑』 p. 26.
PDF版のダウンロード
本記事は、チャビングに関する公式資料でもあるため、PDF版もご用意しております。必要に応じてご利用ください。