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リアルな見た目や動きをしたルアーほど釣れる、というのは単なる人間の思い込みである。
釣りを科学するルアーブランド「ライゼンバイト」のルアーデザイナーである私が、詳しく解説しよう。
そもそもルアーにリアルさが必要ない事は100年前に検証されている
現在のプラグ系ルアーの祖であるジェームス・へドン氏が、1904年のへドンのカタログ内でこう語っている。
In angling for Bass, or any other game fish, nothing is gained in constructing the bait to resemble any living thing.Imitation minnow, frogs, etc, may have a tendency to catch angler who does not know the nature and habits of game fish, but it is certain these imitative qualities perform no part in provoking "STRIKE".
- 1904 Heddon Catalog
バスやその他ゲームフィッシュの釣りにおいて、実在する生き物に似せたルアーを作っても得られるものは何もない。小魚やカエルなどに似せたルアーは、魚の性質や習性を知らない釣り人を釣り上げられる傾向はあるかもしれない。しかし、本物の餌に似せる事は、魚を釣ることには役立たない事は確かだ。
- 1904 へドンカタログ」
こう言い放った彼が市販用ルアーとして最初に発売したのが下記画像のルアー「スロープノーズ」である。
一見すると奇抜に見えるルアーだが、実はこの設計がルアーとして実に理にかなったデザインなのである。
機能もしない見た目が奇抜なだけのルアーをつくるだけなら誰にでも出来る。しかし、このような奇抜に見えて実は洗練された機能を持つデザインというものは、工学や人間行動学の観点から考えても、相当の検証が行われた上でないと基本的に行きつくことは出来ない。
つまり、先述したへドン氏の言葉は、相当に検証した上での意見である可能性が極めて高いということである。それが事実ならば、ルアーにリアルさが必要ないことは、100年以上前に一定の形で既に実証されていたという事だ。
現代ルアーの元祖が"非リアル系"という事実
また、へドンのスロープノーズだけではなく、現代ルアーの元祖であるスプーンやスピナーもまた、実在する生物には全く似ても似つかない。
一般的にはスレた魚やクリアな水質ではリアルなルアーが良いと誤解されがちだが、そもそもそれらの意見は、『魚がスレるという現象』や『魚の視力』について理解が浅い故に発生するもの。
関連記事:「魚がスレる」とは?知ればもっと釣れる、魚がルアーにスレる現象の正体
そんな理屈が通るなら、クリアポンドのトラウトはスプーンで釣れないことになる。激スレフィールドでスピナーを使ってバスが爆釣になることも珍しくないが、その説明もつかなくなる。
過去には小魚などを模したリアル系スピナーなども存在したが、今は廃れて消えてしまっている。これらの事実もまた、「リアルなルアーほど釣れる」という思想が勘違いであることを示唆している。
釣りを科学するルアーブランド「ライゼンバイト」が証明する”リアルな外見の不必要性"
読者の中にはライゼンバイトのファンの方もいることだろう。そしてライゼンバイトのファンの方なら既にご存知だろう。
ライゼンバイトのルアー製品は、他を圧倒するような釣果性能を持つと、多くのユーザーから高く評価されている。しかし、現行のライゼンバイト製品には、リアルな見た目や動きをしたルアー製品がたったの一つも存在しない。
この事実もまた、『リアルなルアーほど釣れる』というものが、単なる釣り人の思い込みであることを示唆しているのである。
本当によく釣れるルアーはリアルだから釣れるのではない
では何故リアルじゃないのによく釣れるルアーが存在するのか。その答えは先述したへドン氏の言葉が既に答えてくれている。
「魚の性質や習性を知らない釣り人を釣り上げられる傾向はあるかもしれない。」
そう。本当によく釣れるルアーとは、見た目がリアルだからよく釣れるのではない。魚の習性や行動原理を基に、ルアー設計を最適化して開発されていたり、偶然にも魚の反応が最大化するような設計になった結果、爆釣ルアーになったりするのだ。
